
2025年6月、フランス・パリで開催されたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)年次大会に参加してきました。今年も世界中から生殖医療の専門家が集まり、活発な議論と最新の研究成果が共有される貴重な場となりました。
当院も参加した研究発表として、タイムラプス培養に関する発表がありました。私たちの施設を含む3施設合同のランダム化比較試験(RCT)です。
演題:
A prospective randomized study evaluating timelapse culture system versus conventional system for preimplantation embryo development with sibling oocytes
タイムラプス培養と従来型培養の比較試験という内容で、胚発生における培養環境の違いがもたらす影響を科学的に検証するものであり、多くの注目を集めていました。
遺伝子レベルに踏み込んだPGT-Aの議論
私は今回、主に遺伝子・遺伝学的検査(特にPGT-A)に関連するセッションを中心に聴講しました。印象的だったのは、PGT-Aで正倍数性(euploid)と診断された胚であっても、染色体レベルでは検出できない遺伝子変異により着床しない/流産に至る可能性があるという議論が多数なされたことです。
多くの施設から、PGT-Aで正倍数と診断された胚の妊娠率が想定よりやや低い(55%程度)というデータが報告されており、私自身、当院のデータでは60%を超えることもあるため、この点には正直少し驚かされました。
正倍数胚が着床しない場合、通常は母体側の子宮環境や免疫、内分泌的要因の検査を行いますが、PGT-Aでも捉えきれない胚側の原因が存在することが示唆されており、今後の研究がさらに求められる領域だと感じました。
生殖医療における遺伝学の進展は目覚ましく、“染色体正常”のその先の解析が今後ますます重要になっていくと実感しました。AI技術や新しい遺伝子解析法の導入によって、胚の「質」をより正確に捉える未来がすぐそこまで来ています。
また、自院のデータと他施設のデータを比較することで、私たちの臨床成績の位置づけや今後改善すべき点が見えてくるのも、国際学会に参加する大きな価値の一つだと改めて感じました。
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