“パリコレ” (パリ・コレクション)と肥満、やせすぎ、そして不妊治療との関係

“パリコレ” (パリ・コレクション)と肥満、やせすぎ、そして不妊治療との関係

医師の船曳美也子です。

今日、ご紹介するのは、生殖医学分野において最高峰とされているHuman Reproduction Update誌からの論文です。
Female obesity is negatively associated with live birth rate following IVF: a systematic review and meta-analysis. Human Reproduction Update, dmz011, https://doi.org/10.1093/humupd/dmz011

肥満が不妊治療の成果にどう影響するかは、長い間、議論の1つとなっています。この研究では、今までの研究論文を統計学的に解析(メタアナリシス)し、どういう結論が導かれたかを検討しています。

著者らは、厳格な基準を満たした21本の研究論文を、統合評価しています。その結果、やはり、BMIが30を超える方は、BMIが標準値(18.5~24.9)の方よりも、出産率が統計学的に有意に15%さがりました。

ただし、日本では、BMIが30を超える方はあまり多くいらっしゃいません。

当院に来院される女性患者様の方々のBMIの平均は、20.6 ± 3.0で、多くは、標準値(18.5-24.9)の範囲内です。BMIが30を超える方は、オーク式ダイエットで平均2か月8~10kgの減量に成功されています。

一方、この論文でのBMI標準値未満(BMI18.5未満)の集団はBMI標準値(18.5~24.9)の集団にくらべて、妊娠率・出生率の低下がみられており、低出生体重児・早産リスクの増加も示唆されています。

日本のやせの基準も、この論文と同じく18.5未満です。18.5を下回ると脂肪からのホルモンが十分にでないため、卵胞発育が停止してしまうからです。
なお、最も良いBMIの範囲は以下の論文にありますが、19.0~22.9でした。
Extremities of body mass index and their association with pregnancy outcomes in women undergoing in vitro fertilization in the United States.
Fertil Steril. 2016;106:1742-1750.

ところで、近頃の“パリコレ”(パリ・コレクション)のモデルさんは、BMIが18.5以上でないと、あの華やかな、“パリコレ”のランウエイに立てないそうですね。フランスでは、なんと、法律で、そのように決まったそうです(2015年4月に可決)。

ただ、ファッション業界幹部やモデル事務所から猛烈な抗議があり、施行された法律ではモデルのBMIの下限を設定しないことになったとか。なんとも骨抜きになってしまいました。ただ、女性の健康の観点から、またまた方針転換がなされるかもしれませんが。

ともかく、妊娠出産にむけて、なるべく標準体重に近づけられるようにがんばりましょう。