ミズイロと学ぶ! 胚を凍結する方法と、凍結胚融解移植という選択(その3)

ミズイロと学ぶ! 胚を凍結する方法と、凍結胚融解移植という選択(その3)

妊娠率は、どうなの?

日本産科婦人科学会「2023年ARTデータ」より

これは、2023年に 日本産科婦人科学会 が公表した、出生児数の年別推移を示したグラフです。
FET出生児は、凍結融解胚移植によって生まれた子を、ICSI出生児・IVF出生児は、新鮮胚移植によって生まれた子を示しています。
なお、FET出生児は、その年に凍結された胚とは限りませんが、このグラフからは、凍結融解胚移植によって生まれる子の数が年々増えていることがわかります。
ただし、このグラフはあくまで出生児数の推移を示したもので、妊娠率や治療成績の優劣を比較するものではありません。

胚凍結についてよくある心配事

胚凍結についてよくある心配事として、
「凍結すると胚が傷んでしまうのでは?」
「何年も保存すると妊娠しにくくなるのでは?」
と不安に感じる方も少なくありません。
現在、胚凍結には超急速ガラス化法と呼ばれる方法が用いられています。
これは、胚を一気に超低温にすることで氷の結晶を作らず、細胞へのダメージを最小限に抑える凍結方法です。そのため、凍結したことで胚が弱くなることは、ほとんどありません。
また、「長期間凍結すると妊娠しにくくなるのでは?」という不安についても、過度に心配する必要はありません。
胚はマイナス196℃の液体窒素の中で保存されており、この環境では時間の経過による劣化はほとんど起こらないと考えられています。凍結タンクが適切に管理されていれば、数十年以上保存された胚でも、融解後に妊娠・出産に至ったケースが報告されています。
※2025年8月には、31年間凍結保存されていた受精卵から赤ちゃんが誕生したという報告もあり、世界最長記録として紹介されました(BBC報道:https://www.bbc.com/japanese/articles/cgkrx2e1m6xo)。

大切なのは、「何年凍結したか」よりも、
● 凍結・融解が適切に行われているか
● 移植のタイミングで、子宮の状態が整っているか
といった点です。
胚凍結は、単に保存するための方法ではなく、より良いタイミング、より良い子宮環境で移植するために、妊娠の可能性を守り、広げる選択肢のひとつといえます。

すべての胚にチャンスがある

胚のひとつひとつに、生まれてくるチャンスがあります。
そう聞くと、着床しなかったり、妊娠が成立しなかったり、残念ながら流産になってしまったときに、「私の何が悪かったの?」と自分を責めてしまう方もいるかもしれません。
でも、そうではありません。
凍結できた胚は、「可能性がある」という段階に進んだということであり、結果がどうなるかは、誰かの努力や選択だけで決まるものではありません。
胚培養士は、採卵された卵子や受精後の胚を、できる限り良い環境で発育できるよう見守り、胚の質を落とさずに移植までお預かりする役割を担っています。
ただ、どれだけ技術が進歩しても、「必ず妊娠につながる」と断言できる胚はありません。
胚の力、子宮の状態、その周期の体調やホルモン環境など、妊娠の成立にはいくつもの要素が関わっています。
そのため、うまくいかなかった結果を、ご自身のせいだと考えてしまう必要はありません。その辛さや悲しさをひとりで背負わなくていいのです。
胚凍結は、ひとつひとつの胚の可能性を大切にしながら、「いま」ではなく「よりよいタイミング」で移植するための選択肢です。
結果がどうであっても、その過程で選んできた一歩一歩が、大切です。
移植後は、胚はあたたかいママのお腹で安心しているかもしれません。
どうぞ日々を楽しく、心軽やかにお過ごしください。

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続く

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