
フィギュアスケート界で注目を集めるAlysa Liu(アリサ・リウ)選手。
彼女の演技は、ただ技術がすごいというだけでなく、どこか伸びやかで、楽しそうで、「生きている」エネルギーを感じます。
ニュースでは彼女の生い立ちも紹介されています。彼女は 匿名の提供卵子と代理母によって誕生し、シングルファザーに育てられたと報じられています。父親は弁護士で、中国の天安門事件に関わり、米国に亡命した方だそうです。
私は生殖医療専門医。職業柄、どうしてもそこが気になりました。今日は、スケートの技術論ではなく、 生殖医療と、そこで生まれた人の人生について 書きたいと思います。
現代の生殖医療では、卵子を提供する人(遺伝)、妊娠・出産する人(妊娠)、育てる人(養育)を分けることが可能になってきました。その一方で、提供卵子による妊娠には医学的リスクもあります。
様々な研究では、妊娠高血圧症候群(特に子癇前症)の増加、産後出血リスクの上昇、が報告されています。その原因としては、免疫学的な要因や胎盤形成の違いが関与している可能性も指摘されています。
私は医師として、こうしたリスクを軽く扱うつもりはありません。 説明責任はとても大事です。でも、今日一番伝えたいことはそこではありません。
提供卵子や代理母の話題になると、すぐに、「倫理的にどうなのか」、「家族の形として正しいのか」、または単に「反対だ」という声が上がります。
もちろん議論は必要です。慎重であるべきです。
でも私は思うのです。目の前に、 生殖医療によって生を受け、 世界の舞台でいきいきと輝いている若者がいる。
その姿を見て、私たちは何を感じるのか。
倫理的な問題をとやかく言って「反対、反対」と言うことと、実際にそこで生まれた人の人生を見つめること。どちらが現実に向き合っているのでしょうか。
当事者の声としてよく耳にするのは、第3者配偶子による生殖医療で生まれたこと自体よりも、「ずっと隠されていた」「嘘をつかれていた」ことの方がつらい、ということ。
問題は出生方法そのものよりも、どう伝えられたか、どう受け止められたか、周囲がどう接したか、ではないでしょうか。自然に語れる環境。特別視しない空気。それが何より大事だと感じます。
特に精子提供では、同一ドナーから多数出生した場合の近親婚リスクが指摘されます。
理論上はあり得ます。
しかし今は、ドナー数の管理や出生数の制限、さらには遺伝子検査による近縁性確認が可能な時代です。リスクはゼロではありませんが、防ぐための様々な科学は確実に進歩しています。
「危ないから全部ダメ」ではなく、どう管理し、どう透明性を高めるかの議論が必要なのだと思います。
私は、卵子提供や精子提供を無条件に推進する立場ではありません。
医学的リスクも、 倫理的課題もあります。でも、その選択をせざるを得ない人がいるのも事実です。
そして多くの親は、 強い覚悟と愛情を持って子どもを迎えています。
どんな形で生まれたにせよ、大切に、愛情を持って育てられているなら、それでいいじゃないか。私はそう思います。
周囲が特別視しないこと。「普通」に受け入れること。それが一番の支えになるのではないでしょうか。
アリサ・リウ選手の演技を見ながら、この医療によって生まれた一人の人間が、これほど力強く、自分の人生を輝かせている。
その現実を前にして、私たちは何を語るべきなのか。
職業柄、医学的リスクは気になります。制度の未整備も気になります。
でも同時に、目の前でいきいきと生きている人の姿も、ちゃんと見ていたい。
そう思った出来事でした。
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