Oak Journal Review:プロゲスチンを用いた卵巣刺激法で得られた胚盤胞の染色体数正常性の検討

Oak Journal Review:プロゲスチンを用いた卵巣刺激法で得られた胚盤胞の染色体数正常性の検討

検査部の奥平です。
7月5日に院内で開催された勉強会より、論文紹介(Oak Journal Review)の内容をお届けします。

今回ご紹介する論文は、
Comparison of euploidy rates of blastocysts in women treated with progestins or GnRH antagonist to prevent the luteinizing hormone surge during ovarian stimulation.
La Marca A, Capuzzo M, Sacchi S, Imbrogno MG, Spinella F, Varricchio MT, Minasi MG, Greco P, Fiorentino F, Greco E.
Hum Reprod. 2020 Jun 1;35(6):1325-1331. doi: 10.1093/humrep/deaa068.
です。

PPOS(Progestin primed ovarian stimulation)は、合成黄体ホルモンであるプロゲスチンを早発LHサージ抑制(すなわち排卵抑制)として使用する卵巣刺激法です。一般的に内服薬である酢酸メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone acetate: MPA)が用いられることが多いです。当院では「HMG-MPA法」の名称で呼ばれており、現在多くの患者様が排卵誘発方法として選択されています。PPOSのメリットとして、1)使用するMPAが安価なため費用が抑えられる、2)MPAは内服薬であり、HMGの自己注射と併用した場合、来院日の制約が少ない、3)トリガーはHCGを用いずにアゴニスト点鼻薬でも可能なので、来院の必要がなく、OHSSのリスクも低減できるなどが挙げられます。そして最大の特徴は、月経周期に関係なくいつからでも排卵誘発を開始できる「ランダムスタート法」が可能なことです。

一方、主なデメリットは、初めから黄体ホルモンを使用しているので、内膜が移植できる状態でないため、新鮮胚移植ができないことです。ただ、現在は全胚凍結後、融解胚移植が行われることがほとんどなので、大きな問題にはならないと思われます。

プロゲスチンの有効性と安全性は、近年広く研究されており、従来の刺激法と比較して、MPAを使用した刺激法では、回収された成熟卵子の数と作成された良質な胚の数が同程度であることが示されています。では、得られた胚の染色体数の正常性についても差はないのでしょうか?そこで本研究では、胚盤胞の染色体数正常率に注目し、PPOSを行った患者と通常の卵巣刺激を行った患者間で比較検討しています。
詳細は動画をご覧ください。