男性の加齢と胚発育

検査部の奥平です。

一般的に、男性の加齢によって精子の質や生殖能力が低下することは広く知られています。最近では加齢と精子DNAの損傷に関する研究もよく行われています。今回は、IVF後の胚発育における男性の加齢の影響を検討した論文をご紹介します。

Male age interferes with embryo growth in IVF treatment.

Human Reproduction. 2021 Jan 1;36(1):107-115. doi: 10.1093/humrep/deaa256.

対象・方法

2015年4月から2017年9月の間に、ベルギーのルーヴェン大学でIVF治療を受けた87組のカップル、合計1057個の胚が研究対象となっています。ICSI、PGT、凍結融解精子、ドナー配偶子による治療は本研究から除外しています。父親および母親の年齢、BMIとDay 3までの胚発育(細胞数、細胞の対称性、フラグメンテーションの割合)との関連が調べられました。

結果

平均年齢は、男性で35.3±5.1歳、女性で34.1±4.5歳でした。

平均BMIは、男性で26.6±4.5、女性で23.0±3.6でした。

Day 2に4細胞期胚を得る確率は、男性の加齢によって低下傾向を示しました(OR = 0.968; 95% CI: 0.936–1.000; P = 0.053)。

Day 3に8細胞期胚を得る確率は、男性の加齢によって有意に低下しました(OR = 0.960; 95% CI: 0.930–0.991; P = 0.011)。

男性または女性の年齢と胚の対称性、フラグメンテーション、品質との間に有意な関連は見られませんでした。

男性および女性の年齢、BMIを含めた多変量解析の結果、Day 3における8細胞数に関連する要因は男性の年齢のみであることが示されました。

解説

これまでに胚の発育や品質と男性の加齢に関連した研究はほとんど行われていませんでした。本研究では、男性の加齢は培養3日目に8細胞期胚となる可能性と負の関連があることを示しました。精子の質の低下は妊娠不成立の原因の一つですが、今回の結果は、精液の測定値が正常値を示していても、男性の年齢が初期胚の成長にも影響する可能性があることを指摘しています。しかし、本研究はサンプルサイズが87組と小さく、結果を確認するためには、より大規模な研究が必要です。