体外受精による子宮外妊娠

体外受精による子宮外妊娠

医局カンファレンスです。

不妊治療の現場にいると妊娠反応は出ているものの胎嚢が子宮内に確認できず、子宮外妊娠の診断に至ることがあります。今回は体外受精による子宮外妊娠について調べてみました。

論文はたくさん出ています。
その中で最近発表されたもので、サンプル数の多いものを紹介します。(Human Reproduction,vol 30,No.9pp.2048-2054,2015)
この論文では、2009-2011年に体外受精にて妊娠に至った44102例の妊娠について検討しています。
 ① 新鮮初期胚移殖
 ② 新鮮胚盤胞移殖
 ③ 凍結初期胚移殖
 ④ 凍結融解胚盤胞移殖
での検討、
また⑥1個移植⑦2個移植での検討もしています。

〈結果〉
全体では子宮外妊娠の割合は1.4%(44102例中620例)でした。
子宮外妊娠が起こりやすい順番としては、①→③→②→④の順でした。(①1.9% ②1.7%③1.3%④0.8%)
また⑥よりも⑦の方が有意に子宮外妊娠率は上昇していました(⑥1.2%⑦1.8%)(p<0.01)

〈解説〉
自然妊娠における子宮外妊娠の割合は1.25-2.0%と言われています。体外受精における子宮外妊娠は日本のデータでは1.4%、アメリカでは1.6%となっています。今回のデータはオーストラリアとニュージーランドにおけるデータですが、ほぼ同じと言えます。また、子宮外妊娠のリスク因子としては、1番が卵管因子(閉塞、狭窄)、次が子宮内膜症、その他で骨盤腹膜炎往、子宮外妊娠既往があります。

今回の結果では、胚盤胞がよく、できれば融解周期で1個移植することが推奨されます。
子宮外妊娠が起こりやすい理由としては、採卵周期に行う新鮮胚移殖は、卵巣刺激や採卵などによって子宮収縮が起きやすく、胚が卵管へ移動しやすくなってしまう、さらに初期胚をもどすことで着床までに時間を要し、その間に卵管へ移動し着床が起こってしまうからではと言われています。
さらに、1個移植よりも2個移植の方が子宮外妊娠率が高くなることは他の論文データでも証明されています。

〈まとめ〉
凍結融解胚盤胞を1つ移植することで子宮外妊娠が回避できる可能性が高まることがわかりました。
また過去の論文で、移植する場所を子宮底より1.5cm以上手前に移植することで5mm以内に移植したときよりも有意に子宮外妊娠率が低下したという結果ででていました。

よって、凍結融解胚盤胞、1つ、1.5cm以上手前に移植すること、特に卵管因子がある方はよりこのことに注意していくことが重要です。