一卵胞からのプロゲステロン分泌と妊娠率

一卵胞からのプロゲステロン分泌と妊娠率

医師の田口早桐です。

Progesterone-to-follicle index is better correlated with in vitro fertilization cycle outcome than blood progesterone
level Fertility and Sterility Vol.103, No.3, March 2015

排卵誘発中にプロゲステロン(黄体ホルモン:通常は排卵後の卵胞から分泌される)の値が高いと、体外受精の成績が低下する、と言われています。理由に関しては諸説ありますがまだはっきり分かっていません。

この論文では、血液中のプロゲステロンの数字が高いこと自体が問題なのか、それとも一つ一つの卵胞あたりが分泌するプロゲステロンの値が関与するのかを調べています。

刺激周期で新鮮胚移植を行った8649周期についての解析です。アゴニスト法とアンタゴニスト法が含まれています。HCG注射を行う日に採血をして、血液中のプロゲステロン値を調べます。
その際に直径14mm以上の卵胞の数でその値を除して、卵胞一個あたりが分泌するプロゲステロン値としてProgesterone-to-follicle index、PFIを算出します。
そして、それぞれが臨床妊娠率に与える負の影響の程度を比較しています。

結果、血液中のプロゲステロン値は、よほど高い数字にならない限り妊娠率に影響しませんでした。
一方で、PFIは増えれば増えるほど妊娠率が下がることが確認されました。
この傾向は、アゴニスト法でもアンタゴニスト法でも同様に観察されました。

プロゲステロン値の上昇が、新たに育ってきた卵胞が多いために、一個一個の卵胞からのプロゲステロンの数字は変わらないのに上昇している可能性があり、その場合は妊娠率に影響を及ぼさない可能性が示唆されました。
さらに、プロゲステロン上昇が内膜に影響すると言われている一方で、それはかなり高い値でのみ観察されることが分かりました。そして一卵胞からのプロゲステロン分泌が多いことが、卵子に何らかの悪い影響を与えている可能性も推察されました。