第55回日本卵子学会に参加しました

第55回日本卵子学会に参加しました

こんにちは。培養士の吉川です。

今月17日、神戸で開催された第55回日本卵子学会に参加してきました。

受精卵の凍結融解の手技など普段の治療内容に関係する内容や、家畜での体外受精技術の向上に関する研究など幅広い内容で発表が行われていました。

その中で特に気になった発表は、「凍結融解後のマウス胚の生存性は融解速度に支配される」というものでした。

受精した胚を凍結保存する際、現在一般的に利用されているのは「超急速ガラス化保存法(Vitrification)」です。
細胞を凍結する際、細胞の中に氷晶ができてしまうと細胞は死んでしまいます。
そこで細胞内に耐凍剤を浸透させ、その後ガラス化液という特殊な培養液内で水分を除去した後液体窒素で急速に冷却するという方法です。

細胞を凍結・融解する際に時間がかかってしまうとそれだけ氷晶ができやすいと言われていますが、この発表では「氷晶は凍結過程よりも融解過程で形成されやすく、その回避には急速な融解が有効である。
また、凍結融解を極めて速くすれば、凍結保存液に耐凍剤は必要ないのではないか。」という仮説に基づいて実験を行っていました。

実験では、マウスの8細胞期胚を、凍結時間・融解時間・耐凍剤濃度の三つの条件を変えて凍結・融解し、その後の胚盤胞への到達率を調べていました。
結果は、凍結時間、耐凍剤濃度にはあまり関係なく、融解時間の速いものの方が胚盤胞到達率は高い結果となりました。

この実験はあくまでマウスでの結果ですが、普段ヒトの胚を扱っていても融解速度が速いものの方がその後発育は良いように感じます。
凍結融解が速ければ耐凍剤は必要ないというのは極端すぎるとは思いますが、耐凍剤濃度は低いほうが良いという意見もありますし、凍結融解速度は今後も重要な検討課題になるだろうと思いました。