PCO(多嚢胞性卵巣症候群)

PCO(多嚢胞性卵巣症候群)

医師の田口早桐です。

PCO女性がPCOでない女性に比べて、避妊や妊娠に関してどのように違いがあるか?という調査の結果が発表されました。
”Contraception use and pregnancy outcomes in women with polycystic ovary syndrome: data from the Australian Longitudinal Study on Women’s Health” Human Reproduction, Vol.29,No.4 2014

PCO、polycystic ovary syndrome
多嚢胞性卵巣症候群は不妊の主要な原因の一つとされています。

病態としては、卵巣の皮が硬くなって排卵しにくい、卵胞が育ちにくい状態になっている、ということがあります。また、肥満やインシュリン抵抗性、アンドロゲン(男性ホルモン)の増加などが引き起こされることもよく知られています。男性ホルモン増加によるにきびや多毛に悩む人も少なくありません。

月経中にホルモン検査をすると、排卵を誘発するホルモンであるLH (luteinizing hormone)の数値が高く、また超音波検査で卵巣内に大きくならない小卵胞が多数観察される、という特徴もあり、診断に用います。

無月経を主訴に婦人科を訪れることが多いので、婦人科診療をしているとよく遭遇しますが、いかんせんほうっておくと月経が来ないので、ピルやホルモン剤などで早期にそして長期に治療を行うことが多い上、妊娠を
希望するとなるとすぐに排卵誘発剤を使用するので、何もしなければどうなるのか、ということはあまり分かっていなかったように思います。

今回の報告はオーストラリアの報告ですが、PCOの人はそうでない人に比べ、「あまり避妊をしない」で、「妊娠を望む」人が多いということが分かりました。普段から月経が来ないので、妊娠ができるのかという不安があるのでしょうか、全体としては避妊に消極的なようです。

多嚢胞性卵巣の人は流産しやすい、という報告があり、この調査でも単純に比較するとPCOは流産が多いという結果が出ました。ただ、多変量回帰分析(他の要因を考慮に入れる)をしてみると、PCOによる単独の影響でなく、PCOによって起こった肥満、代謝異常、不妊治療、などが関与しているという結果になりました。

そして最終的に、生涯に持った子供の数は、PCOとそうでない人との間に差はなかったようです。

当然、私が普段接している患者さんの中にもPCOの方は多いのですが、この報告は不妊治療に通っている人もいない人も全て含めての調査なので、有意義だと思います。
また、排卵回数が圧倒的に少ないにも拘らず、最終的には子供の数は変わらないというのは、PCOの人たち自身がある程度自覚を持って妊娠に望んでいる結果だと思います。ただ、5人も6人も出産する社会であれば、もしかしたら、この数字に差が出るのかな、という興味も湧きました。