ウシの卵成熟におけるレスベラトロールの効果

ウシの卵成熟におけるレスベラトロールの効果

医師の船曳美也子です。

Beneficial effect of resveratrol on bovine oocyte maturation and subsequent embryonic development after in vitro fertilization Feng Wang,Ph.D., China VOL.101 NO2./FEBRUARY 2014 p577-586

この論文は、中国北京の農業大学からの発表です。
ところで、中国といえば、驚いたのが今年1月のBBCニュースです。

中国のBGIという会社が、クローン豚を年間500頭も量産しているというのです。目的は、研究のため。
世界最大の遺伝子シーケンサーが中国にあるという噂はきいていたのですが、それもこの会社が所有しているようです。1フロアに90頭のクローン豚が飼われている画像は衝撃的でした。

さて、論文の内容ですが、「ウシの卵成熟におけるレスベラトロールの効果」がテーマです。

畜産でのARTは、IVM(体外成熟培養)が主流です。今回の論文でも、ウシの未熟卵子を採卵し、24時間IVMしMⅡ期に成熟した卵子と精子をIVFしています。
受精卵を培養し、Day8で胚盤胞の形態の判定をします。この体外成熟培養の培養液に、異なる濃度のレスベラトロール(0.1μM、1.0μM、10.0μM)を添加したもの、添加なしのもので、いろいろ違いがでるか検証しています。

結論からいうと、成熟培養液に添加したレスベラトロールは1.0μMのものが、最も、卵子の成熟率がよく、受精卵の胚盤胞達成率やハッチング率もよく、着床率もあがりました。

その機序としては、レスベラトロールが、顆粒膜細胞からprogesterone分泌を増加させ、それが、未成熟卵子の減数分裂再開のきっかけとなるMosタンパクの集積をさせるということ、また、卵子そのもののSirtuinI(サーチュイン)遺伝子活性を高めることで、卵子の質をよくする機序が説明されています。
また、レスベラトロールは成熟卵や顆粒膜細胞での活性酸素の量を減らしました。

未成熟卵の場合、IVM(体外成熟培養)します。その際の培養法については当院でも研究していて、学会でも報告しています。今回の報告は、ウシの卵子ですが、人間でも同様の結果がえられるのではないかと考えました。今後も、少しでも良い結果を得られるように日々改善をかさねていきたいと思っています。