守秘義務

守秘義務

理事長の中村嘉孝です。

海上保安官の守秘義務違反が議論になっていますが、今回は医師の守秘義務についての話です。

今日、国内未承認の経口妊娠中絶薬を服用して堕胎したとして、書類送検されたというニュースがありました。22才の女性がインターネットで購入した薬を飲んで堕胎したそうですが、服用後に激しく出血したため受診、医師に服用を打ち明けて、医師から通報を受けた警察が捜査していたとのこと。

この薬については、同じようなケースがこれまでも数多くあり、産婦人科医の間でも問題になっていました。
たしかに看過できない問題ではあるのですが、この報道で私が気になったのは、医師からの通報であったという点です。

刑法は、医師に職業上の守秘義務を課しています。医療機関にはよく、警察から捜査のための照会があります。
多くの医療機関では協力しておられるようなのですが、児童虐待防止法のように明文の規定がある場合を除き、当院では全てお断りしています。
たいていの医療機関は快く協力しておられるので、刑事さんから「そんなことを言うのは、お宅だけだ」と怒鳴られたこともあります。

もちろん公益上、必要なことはよく理解できるので、「裁判所の令状をとってカルテを差し押さえて下さい」と申し上げるのですが、さほどの事件では無いのか、令状を持ってこられたことは今のところありません。

海上保安官の件でも、グーグルは守秘義務を理由に自発的にIPアドレスを教えることはできないと、令状によって押収してもらったようです。
結果的に同じことであっても、そのような姿勢を確認することは大切だと、私は思いました。

職業上の守秘義務については次のサイトに詳しく解説されています。ご参考まで。