ミズイロと学ぶ!‒ 第5話 採卵された卵子が精子と出会うまで(その2)〜卵子が体の外へ出た、その瞬間から〜

ミズイロと学ぶ!‒ 第5話 採卵された卵子が精子と出会うまで(その2)〜卵子が体の外へ出た、その瞬間から〜

前回は、採卵された卵子が成熟卵として受精の準備を整えるまでを紹介しました。
今回は、いよいよ卵子と精子が出会う瞬間──顕微授精から、
受精の確認、そして新しい命が芽生えるまでの過程をたどります。

顕微授精(ICSI)へ!

インキュベーターで前培養し、精子の調整も完了したら、次は顕微授精です。
顕微授精をする際は、倒立顕微鏡とマイクロマニピュレーターを用いて行います。
写真の左側は、卵子を固定するためのホールディングピペットで、右の極細のピペットがインジェクションピペットです。第一極体の下には紡錘体があります。紡錘体は細胞分裂の際、染色体を正しく分けるためのしくみです。これを傷つけると受精が完了しなかったり、細胞分裂がうまく進まなくなったりしてしまいます。よって、顕微授精を行う際は6時や12時の方向に第一極体を置き、3時の方向から針を挿すことで、紡錘体の損傷を回避しています。
時々、第一極体の下に紡錘体がない場合もあるので、紡錘体をきちんと確認するシステムもあります。

顕微授精。右の針の先端近くに精子があるのが見えます。

こうして顕微授精を行い、卵子はすぐに培養器(インキュベーター)に入れます。
顕微授精の17〜19時間後に受精の確認をします。
このとき、卵の中に2つの丸い核が見えたら受精が完了していることがわかります。これを前核といい、1つは卵子由来、もう1つは精子由来で、この2つは1つに融合して、その後、2つの細胞へと分裂します。
写真は、受精が完了した卵です。丸い2つの核がぴったりと寄り添っているのが見えますか?

前核期胚。中央に丸い核が2個見えます。

もう卵子ではありません。受精卵(胚)です。

このあと、順調に育ち、2日目には4細胞、3日目には8細胞、そして5日目くらいには胚盤胞へと発育します。
この発育が順調かどうかが大切です。

『胚培養士ミズイロ』のなかでは、検卵の場面で胚培養士が心の中で
「あとは卵子の力だ。胚培養士としてできる限りのことはする。でも、そこから先は——」
と考えながら、「頑張れ、頑張れ」と卵子に声をかけています。
胚培養士は、卵子のもともとの質や力を上げることはできません。だからこそ、日々、今ある卵子の質、精子の質、胚の質を落とさないように懸命に技術を高め、お世話をしています。

さて、次回からはいよいよ第2巻に突入です!


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第6話(第2巻)へ続く

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