
二段階移植、ERA、タイムラプス、フローラなど他にもたくさんあって、キリがないのでこの辺りでやめておきます。
問題は、詐欺的商法の新規技術を全部切って捨てるわけにもいかないということです。
嘘から出た真、という諺がありますが、医療技術もデタラメな思い付きから始まったりする。また、宣伝ほどの効果はないが、一定の効果は期待できるものもあります。
ですので、こういった新規技術は3つの観点から冷静に見る必要があります。
1つ目は人間性です。「なんだか話はうまいくて卒がないけれど、なんだか信用できない」。あるいは、「この人は何年か前に別のこと言ってたけど、立ち消えになっているよな」ということもあります。学会で対面で情報収集する一番の意味は、ここだと思います。
2つ目は、だめもとでやってみることが許されるかどうか。ひと昔前に卵巣から腹腔鏡で幹細胞を取ってきて、そのミトコンドリアを卵子に注入するという”Augment”という治療法がありました。
しかし、ただでさえ卵巣予備力が落ちている卵巣を傷つけ、さらに低下させることになります。米国のOvaScienceという会社が開発し、わざわざ弊院まで営業に来られましたが断りました。その後、さすがに問題となり、会社ごと消えてなくなりました。
3つ目は、誰にでも効くものではないけれど、特定の条件の場合には有効ということがある。私はこれが一番、大事だと思っています。というより、医療というのは本来そういうもので、個々人に最適なものを選ばなくてはならない。
しかし、本当に効くのかというエビデンスが統計でしか出てこない。パーソナライズとエビデンスは数学的には矛盾した方向性であり、そこを補うのは臨床的センスだと思います。
エビデンスに沿ってパターン化された治療であれば、AIで十分。いや、AIすら要らないでしょう。でも、臨床の経験の中で、どうもこのような人にはこの治療が有効だと思う。エビデンスは乏しいかもしれないが、総合的に考えて患者のためになる。それを信念を持って勧めるのが本当の医者の役目だと私は思います。
ある時、お好み焼き屋でソースと辛子だけで食べていたら、大将に「マヨネーズもつけて。絶対に美味しいから」と勧められました。
私はカロリーを気にしてマヨネーズを控えていただけなのですが、大将が奥さんに「あんたがマヨネーズ好きなだけやん。お客さんも好き嫌いがあるから」と怒られていたのが逆に申し訳なく、マヨネーズをつけました。美味しかったです。背中を押してもらってありがとうございました。