精子の質を改善するサプリメント:コエンザイムQ10

検査部の奥平です。

乏精子無力症(Oligoasthenozoospermia: OA)は、乏精子症(精子濃度 15×百万/ml未満)と精子無力症(前進運動率と総運動率がそれぞれ32%と40%未満)を併せ持つ症例です。不妊患者の約3分の1は、OAの原因が不明であることが報告されており、特発性OAと呼ばれています。特発性男性不妊の潜在的な要因として、酸化ストレスと精子のDNA断片化(SDF)が考えられています。また、コエンザイムQ10(CoQ10)は、その抗酸化作用により、特発性男性不妊症の治療に有効であることが報告されています。
そこで、今回紹介する論文では、特発性OAの不妊男性を対象に、CoQ10療法が有効であるかどうかを検討しています。

Coenzyme Q10 Improves Sperm Parameters, Oxidative Stress Markers and Sperm DNA Fragmentation in Infertile Patients with Idiopathic Oligoasthenozoospermia.
World J Mens Health. 2021 Apr;39(2):346-351. doi: 10.5534/wjmh.190145. Epub 2020 Jan 20.

対象・方法
65人の特発性OA不妊患者と40人の正常男性(コントロール)を含んだ症例対象研究です。患者は、CoQ10を200mg/日の用量で3ヶ月間経口摂取しました。精漿中のCoQ10濃度、総抗酸化力(TAC)、総活性酸素種(ROS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、精子DNA断片化(SDF)レベルを、正常男性とCoQ10摂取前後の不妊患者で測定しています。

結果
不妊患者群において、CoQ10を3ヶ月間摂取すると、摂取前と比べて、精子濃度(p<0.05)、前進運動率(p<0.05)、総運動率(p<0.01)が向上しました。

不妊患者群の精液中の抗酸化状態は、正常男性群に比べて有意に低かったが(CoQ10 (p<0.05)、TAC (p<0.01)、GPx (p<0.001))、一方ROSレベルは有意に高かったです(p<0.001)。
CoQ10療法は、不妊患者群において、治療前の値と比較して、精液中のCoQ10レベル(p<0.001)、TAC(p<0.01)、GPx(p<0.001)レベルを有意に向上させ、ROSレベルは有意に減少させました(p<0.05)。
特発性OA患者では、正常男性に比べてSDFが有意に高く(p<0.01)、CoQ10の摂取によりSDFが有意に減少しました(p<0.01)。

ピアソン相関係数を用いた解析では、CoQ10レベルは、精子濃度(r=0.48、p=0.01)および総運動率(r=0.59、p=0.003)と正の相関があることがわかりました。また、SDFは総運動率と負の相関を示しました(r=0.54、p=0.006)。

解説
CoQ10は、ミトコンドリア呼吸鎖の構成成分であり、抗酸化分子として作用します。CoQ10の欠乏は、精子の損傷、精子の運動性および精子数の低下につながることが知られています。以前の研究では、CoQ10を補充することで、不妊症の男性の生殖成績が改善することが示されています。
特発性OAの不妊患者の精液には高レベルのROSが含まれており、酸化ストレスを介して精子の機能や精子DNAの完全性が損なわれると考えられます。CoQ10は、その抗酸化作用により、ROSの負の影響を軽減し、精子の機能を高めることができます。本研究では、特発性OA患者にCoQ10を少なくとも3ヶ月間補充することで、SDFが減少し、精液の質と精液の抗酸化力が向上することを確認しました。これらから、CoQ10は、OA男性不妊患者の治療に適用できる可能性があると考えられます。