PGT-Aを行う場合、c-IVFとICSIどちらが適しているのか?

検査部の奥平です。

体外受精の方法には、精子と卵子を共培養するc-IVFと精子を卵子内に直接注入するICSIの2種類があり、一つの周期に2種類同時に行うことはsplitと呼ばれます。splitが選択される例として、精液のパラメーターがボーダーラインにある方や、初めての体外受精周期で予期せぬ受精障害を最小限に抑えたい場合などがあります。では、異なる受精方法で得られた胚の染色体異数性に違いは見られるのでしょうか?また、受精方法が着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の診断精度に影響を及ぼすのでしょうか?今回は、これらの疑問を検証した論文をご紹介します。

Comparison of aneuploidy rates between conventional in vitro fertilization and intracytoplasmic sperm injection in in vitro fertilization–intracytoplasmic sperm injection split insemination cycles
F&S Reports, VOLUME 1, ISSUE 3, P277-281, DECEMBER 01, 2020

対象・方法
研究デザインは後ろ向きコホート研究です。2016年6月から2019年7月の間に、単一の不妊治療センターで実施された、合計118組のカップル131回のsplit周期が対象です。全ての周期において、合計2,129個の卵子は、c-IVF(n = 1,026)とICSI(n = 1,103)にランダムに割り当てられました。Day 5から7にグレードが3CC以上の胚盤胞にPGT-Aを行い、胚の倍数性率、異数性率およびモザイク率に関して、c-IVF群(n = 288)とICSI群(n = 336)で比較しています。

結果
2PN胚あたりの胚盤胞形成率は、c-IVF群の方がICSI群よりも高かった(62.0% vs. 52.5%, P < 0.001)が、2PN胚あたりの生検可能な胚の割合は、IVF群とICSI群間で差は見られませんでした(54.2% vs. 51.5%, P = 0.354)。
生検あたりの異数性率は、c-IVF群とICSI群間で差はありませんでした(50.3% vs. 45.2%, P = 0.203)。また、性染色体異常を伴う異数性は、両群間で同程度でした(6.2% vs. 7.2%, P = 0.723)。
c-IVF群とICSI群間を比較して、モザイク胚(1.7% vs. 2.4%, P = 0.226)および検出不可能(1.0% vs. 1.5%, P = 0.621)の割合に差は見られませんでした。
割り当てられた卵子1個あたりの倍数性の胚が得られる確率は、c-IVF群とICSI群間で同程度でした(13.2% vs. 15.5%, P = 0.123)。

解説
受精方法がPGT-Aの診断精度に与える影響を評価したランダム化比較試験はありませんが、2012年に米国生殖医学会は、透明体に付着した精子や卵丘細胞の混入などによる不正確な結果が懸念されることから、PGT-Aを行う周期ではICSIの使用を推奨する委員会意見を発表しました。そのため、現在、ほとんどの検査機関ではPGT-A症例にICSIを推奨しています。しかし、本研究の結果では、c-IVFの使用は、異数性やモザイク胚の高い発生率とは関連しませんでした。今回の方法では、胚は生検の前に十分に洗浄され、胚を移動させる際の培地の持ち込み量は可能な限り少なくしています。また、生検片は、チューブに入れる前に少なくとも3〜4回洗浄されました。これらから、生検の前後に胚や細胞を注意深く洗浄すれば、c-IVFでもコンタミネーションのリスクは高くないと考えられます。
また、c-IVFでは、卵子1個あたりの倍数体胚ができる確率がICSIと同等であったことから、男性因子による不妊症ではない場合、ICSIはPGT-Aの実施に特段有益ではなく、胚の成績を向上させるものではないことがわかりました。
しかし、本研究は、後ろ向き研究かつサンプルサイズが限られ、単一の施設で行われたため、今回の結果をさらに確認するためには、多施設や他の遺伝子検査機関でのデータが必要であると考えられます。