父と息子と精巣機能

胚培養士の奥平裕一です。

今回は、精巣機能は父親と息子のペア内で関連しているかどうかを調べた論文をご紹介します。これまでの研究で、男性の不妊と精子形成障害の家族集積性が示唆されています。しかし、一般集団の男性において、父親と息子間での精巣機能の関連についてはほとんど知られていませんでした。

Familial resemblance in markers of testicular function in fathers and their young sons: a cross-sectional study

Human Reproduction, deaa314, https://doi.org/10.1093/humrep/deaa314

対象・方法

2008年~2011年において、デンマークの72組の親子(父親と息子)を対象にした横断研究です。研究へ参加する息子は、兵役への適性を調べるための健康診断を受けに来た男性から募集され、その後彼らの父親が研究へ招待されました。ちなみにデンマークでは、徴兵制が施行されており、18歳~32歳までの男子が対象となっています。男性は、兵役に適しているかどうかに関係なく募集されたため、全体的に若い男性の一般的な集団を表しており、精液の質に基づく選択は行われていません。

精巣サイズ、血清中のホルモン(FSH、インヒビンB、LH、テストステロン、遊離テストステロン、エストラジオール、性ホルモン結合グロブリン(SHBG))、精液パラメーター(精液量、精子濃度、総精子数、前進運動精子率)を父と息子それぞれで測定し、関連性を調べています。

結果

研究に参加した父親と息子の年齢の中央値はそれぞれ53歳と19歳でした。未調整の分散成分分析では、父親と息子間の家族的類似性は、精巣サイズとSHBGについてのみ観察されました。調整後の分散成分分析では、父親と息子間の家族的類似性が、精巣サイズ、FSH値、インヒビンB/FSH比率、テストステロン値、遊離テストステロン値、SHBG値で確認されました。この家族的類似性は、父親と息子の共通の生活習慣因子を調整しても結果が弱まらなかったため、遺伝性のものであることが示唆されました。一方、いずれの精液パラメーターについても、父親と息子間で関連はみられませんでした。

解説

本研究では、精巣サイズ、血清テストステロン、FSHを含む精子形成マーカーは父親と息子で関連しており、息子の精巣機能に対する父親の遺伝が影響していることが示唆されました。しかし、精巣機能のすべてのマーカーについて、推定された家族的類似性は観察された変動の半分以下に過ぎず、このことは母親の遺伝的要因や出生前および成人期の環境曝露を含む他の要因も重要な影響を与えていることを示しています。今回、いずれの精液パラメーターについても、父親と息子間で関連はみられませんでした。この理由として、精液パラメーターには個人内および個人間の大きな変動が生じるため、本研究では精液の質との関連を統計的に検出するだけの十分な症例数がなかった可能性もあります。