父親の年齢は胚の染色体数異常に影響するか?

胚培養士の奥平です。

今回は、父親の年齢と胚の染色体数異常の発生頻度との関係を調べた論文をご紹介します。男女ともに平均初婚年齢が高まっている現状で、多くの方が関心を持たれるテーマだと思います。

Is there a correlation between paternal age and aneuploidy rate? An analysis of 3,118 embryos derived from young egg donors.

Fertility and Sterility 2020年8月号から。

女性の年齢が高まるにつれ、胚の染色体数異常の発生頻度が増加することはよく知られています。これは卵の老化により減数分裂の過程でエラーが起き、結果として卵子の染色体数に異常が生じることが主な原因です。

一方男性の場合、加齢により精子の質の低下やDNAが損傷を受け易いなどは報告されていますが、胚の染色体数異常への影響はよく分かっていませんでした。

方法

男性患者を年齢により3つのグループ、A(39歳以下、203名)、B(40から49歳、161名)、C(50歳以上、43名)に分け、ドナー卵子(平均年齢26歳)を用いてICSIを行い、胚を作成しています。※若い女性のドナー卵子を用いているため、この研究への女性(卵子)関連因子の影響を最小限に抑えられると考えています。そして各グループ間で、受精率と胚盤胞形成率、胚の染色体数を調べています。胚の染色体数は、培養5日目もしくは6日目の胚盤胞を用いて、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A、昔はPGSと呼んでいました)により調べました。

結果

受精率について、Cグループ(76.35%)はBグループ(80.09%)に比べて低かったです。胚盤胞形成率は3つのグループ間で差は無かったです(A, 52% vs. B, 53% vs. C, 55.5%)。注目の染色体数については、正倍数体率(A, 69.2% vs. B, 70.6% vs. C, 72.4%)、異数体率(A, 14.7% vs. B, 12.8% vs. C, 13.9%)、モザイク率(A, 16.1% vs. B, 16.6% vs. C, 13.6%)に関して、3つのグループ間で差はありませんでした。また、異数性のタイプでみると、高い年齢では若い年齢に比べて、部分異数体の割合が高かったです(36.6% vs. 19.4%)。

結論

本研究では、ドナー卵子を用いた場合、父親の年齢は胚の染色体数異常の発生頻度に影響しないことが明らかになりました。しかし、今回の検査方法では、胚の染色体数異常が母親もしくは父親由来か区別できないことが本研究の限界であると考察で述べられています。解析技術の進歩によりこの制限が解消され、より詳細な知見が得られることを期待しています。

また新たな報告がありましたら、この場でご紹介させていただきます。