新型コロナと妊娠

医師の船曳美也子です。

厚生労働省の集計によると、今年5~7月の妊娠届出が前年比-11.4%と、2万6331件の減少でした。届出は母子手帳を受け取るために妊娠10週前後に行うものです。受精は妊娠2週相当なので、今年3~5月の排卵での妊娠が前年より11%減ったということです。

これは、2月28日の一斉休校、4月7日~5月6日の緊急事態宣言など、が影響していたと思われます。またその頃は、海外の学会にならい、日本生殖医学会も、不妊治療の延期を提案する声明がだされたこともあり、胚移植も減っていました。(5月18日より、不妊治療の再開を促す通知が出されました。)

新型コロナ感染症を正しく恐れようと、いいますが、何が正しいのかわからないと思われている方が多いと思います。白か黒か、ならわかりやすいのですが、例えば0.1%のリスクにおびえるかたと、たいしたことないと思う方、その違いが混乱の原因かもしれません。

さて、では、妊娠に与える影響はどうなのでしょうか?

日本産科婦人科学会によると、『現時点では、情報は限られていますが、妊娠中に感染すると、妊婦さん自身の症状は(妊婦でない方に比して)重くなるということはなさそうです。赤ちゃんへの感染を疑う報告はわずかで、明らかなリスクは報告されていません。https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/200526.pdf』ということなので、ひとまず、安心していいと思います。

ちなみに、海外の論文が、以下にあります。

一つは4月の武漢からの報告で、新型コロナにより流産、早産のリスクなく、出生前の胎児感染の証拠は認めなかった。https://www.ajog.org/article/S0002-9378(20)30462-2/fulltext

同じ中国からの報告で、欝の妊婦が増えた。https://www.ajog.org/article/S0002-9378(20)30534-2/fulltext

フランスからの報告(6月14日)では、周産期死亡や早産のリスクがあった、ただし、35歳以上の肥満という条件が関係している可能性あり。https://www.ajog.org/article/S0002-9378(20)30639-6/fulltext# 

6月26日のアメリカCDC(国家機関)の報告では、合計9万人が対象で、妊娠中の女性は、5.4倍入院しやすく、50%高く、集中治療室での治療を受け、人工呼吸器装着確率が70%上がった。とあります。ただ、アフリカ系やヒスパニック系の方、肥満妊婦の方が多い、ことだとか、そもそもこの統計では妊婦の死亡率が、コロナ関連であってもなくても0.2%と日本の基準では驚くような高値となっています。欧米と比べた場合、日本の妊産婦死亡率は、欧米学者には「信じられない」くらい低いという日本の周産期医療水準があります。https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6925a1.htm?s_cid=mm6925a1_w 

以上、データ分析上には限界がありますが、現在までではっきりしているのは、胎児奇形をもたらすようなウィルスではないということです。私は、妊娠に関しては、必要以上に恐れず、しかし、油断はせず、というスタンスがいいのではないかと思っています。