卵管鏡下卵管形成術(FT)

卵管鏡下卵管形成術(FT)とは、卵管に明らかな閉塞や狭窄など通過障害が認められる場合に行う治療です。
卵管の閉塞以外にも、卵管にある細かなヒダの機能低下や子宮内膜症・クラミジア、また先天的なものが原因となる場合もあります。また、片方の卵管が閉塞しており受精しにくい場合もあります。
卵管鏡下卵管形成術(FT)後、タイミング法・人工授精等の一般不妊治療を3回以上行っても妊娠に至らない場合は体外受精をお勧めしています。

卵管鏡下卵管形成術(FT)とは?

不妊症の原因の約3割が卵管因子と言われています。
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、子宮卵管造影検査(HSG)で卵管に明らかな閉塞や狭窄など通過障害が認められる場合に行う治療です。
卵管通過障害があると卵子が精子と出会えないため、受精ができません。
卵管は二つあり、片方に閉塞部があるが、片方が通過しているので、大丈夫だという考えも大きな間違いです。
一般的に交互に排卵すると考えられていますが、中には、右の卵巣から連続して排卵することもあれば、左の卵巣から連続して排卵することもあります。
よって、閉塞部がある卵管側の卵巣ばかりから排卵すると、自ずと受精にはいたらないことが多くあります。
また、片方が通っていたとしても、その卵管の状態が良くない場合もあり得ます。卵管には細かなヒダがあり、そのヒダが動くことによって卵子が運ばれていきます。
その機能が弱っていると、上手く卵子が運ばれず、受精が難しくなることも考えられるのです。
閉塞の原因は先天的なものから子宮内膜症やクラミジアなど多岐にわたります。
卵管鏡下卵管形成術(FT)を行うと、卵管の疎通性が回復されるのとともに、卵管鏡で卵管内の状態を直接観察できます。
ただし、卵管の太さは1mm以下なので、卵管鏡下卵管形成術(FT)を行っても卵管の疎通性が回復しない場合(約5%)や、回復しても再び閉塞や狭窄する場合(約10%)もあります。

卵管鏡下卵管形成術(FT)の方法

約1mmのFTカテーテルと呼ばれるバルーンを内蔵し、先端に卵管鏡がついた器具を用いて治療を行います。腟から子宮にカテーテルを挿入し、カテーテルに内蔵されているバルーンで卵管を広げます。
この時に、閉塞や狭窄した卵管の疎通性を回復させます。
また、卵管鏡で卵管内を直接観察し、卵管の状態を知ることができます。
多少痛みを伴うこともありますので、当院では静脈麻酔を使用し手術を行っています。
所要時間は片側で約20分程度、両側でも約30〜40分で、日帰り手術になります。

(1)腟から子宮内にFTカテーテルという細い管を挿入し、卵管鏡(内視鏡)で卵管の入り口を確認します。

1、FTを挿入、卵管の入口確認しているイラスト

(2)カテーテルの風船(バルーン)を卵管の詰まっている部分まで伸ばしていき、狭くなっている部位や閉塞している部位をバルーンで拡張します。

2、バルーンを伸ばし拡張しているイラスト

(3)バルーンの中心には卵管鏡が入っています。
通過障害のある部位を開通した後、バルーンを引き戻しながら卵管内腔面を観察していきます。

3、障害部位を開通した後バルーンを引き戻しているイラスト

卵管鏡下卵管形成術(FT)のリスク

手術などに伴う強い癒着があると穿孔することがあります。
その場合は、一旦治療を中止し、抗生物質の服用で様子を見ます。
通常は、腹腔内出血などの症状が起こることはないので、安静のみで改善します。

手術後に腹痛や出血、感染症を起こす可能性もあります。
麻酔により、アレルギーや気分不良などが起こる場合があります。

卵管鏡下卵管形成手術前の注意点

卵管鏡下卵管形成術は月経終了日から排卵までの間に行います。
月経中~手術日翌日まで避妊の必要があります。

手術後の経過と治療

卵管鏡下卵管形成術(FT)後、タイミング法または人工授精による一般不妊治療をあわせて3回行っても妊娠されない場合は、卵管に問題があると考えられるので、体外受精をお勧めします。
(卵管鏡で卵管内を観察した結果によっては、早期に体外受精へのステップアップをお勧めすることがあります。)
また、術後は下腹痛に備え、ご希望の方に鎮痛剤をお渡ししています。

卵管鏡下卵管形成術(FT)の料金

片側FT 145,000円
両側FT 280,000円

※上記の金額は、健康保険3割負担の場合の金額です。
※閉塞していない場合は、全額自己負担となります。
※保険適用の場合は、高額療養費制度の適用となります。
※料金は予告なく、変更になる場合がございます。