トリガーにGnRHを使用した場合の卵子の成熟

医師の田口早桐です。

The use of GnRH-agonist trigger for the final maturation of oocytes in normal and low responders undergoing planned oocyte cryopreservation
Human Reproduction 5月号より

トリガーは、採卵35~6時間前に育った卵胞を最終成熟させるために使う薬です。通常、HCGという注射を使いますが、卵巣を刺激する作用と黄体を賦活する作用が強く、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を悪化させます。HCG以外に使うのがGnRHa製剤で、当院では点鼻スプレーを使用します。HCGに比べ半減期が短くて、卵巣を過度に刺激しませんのでOHSSの悪化が防げます。

使い分けとしては、当院では、卵巣に多くの卵胞が育てば育つほど、HCGを避けて点鼻薬をトリガーに使います。HCGの量も卵胞数に従って調整しています。

通常HCGを避けてGnRHaを使用するのは卵胞が多く育って卵巣過剰刺激症候群のリスクが高いときです。
卵胞からはE2(エストロゲン)が分泌されますから、E2値で卵巣がどのくらい刺激に反応しているかわかります。
著者の以前の分析で、E2>3000pg/ml(とてもOHSS傾向のときとそこまででもない場合)で、成熟率に差がないことが分かりました。

今回の論文は、逆に卵巣の反応が正常~低反応の場合において、GnRHでの卵子の成熟率はどのように違うかを調べています。

ちなみに、新鮮胚を移植するときは、GnRHaのみ使用した場合は、黄体賦活作用が少ないので、HCGを使用したほうがよいといわれていますが、この論文ではすべて、凍結していて、単純に卵子の成熟率のみを比較しています。

結果として、症例全体の成熟率から考えて、E2の値が1000以下の場合は、それ以上の場合に比べてやや成熟率が劣る傾向にあるものの(有意ではない)、それ以上だと、1001~2000、2001~3000、3001~4000、4000以上、すべてほぼ同じでした。

結論としては、OHSSでない場合でも、GnRHaトリガーによる成熟卵獲得は、卵巣の反応の強弱とは関係ない、ということになります。

では、発育卵胞が極端に少ない場合(3個以下とか)には、全体よりやや成熟率が低かったですが、HCGを使用したほうが無難ということになるのでしょうか?
当院でも、そのような場合は卵子が貴重で少しでも多くの卵子を回収したいし、OHSSのリスクがないので、積極的にHCGを使用します。

しかし、この著者によると、発育卵胞の少ない症例においては、HCGを使用してもGnRHaを使用しても、成熟率はやや低い傾向にあり、差は見られなかったとのことで、卵巣の反応不良の場合は、卵子の成熟にも問題があることが多いのかもしれないということが示唆されました。