流産と染色体異常

流産の主な原因は、染色体異常であることがわかっており、流産の約6割になんらかの染色体異常が見つかります。35歳以上で流産された方では、染色体の数が1本多くなる(トリソミー)が74%に見られます。

年齢層別流産で見られる染色体異常

年齢層別流産で見られる染色体異常(35歳未満) 年齢層別流産で見られる染色体異常(35歳以上)

Maribel Grande : Human Reproduction Vol.0 no.0 pp.1-9,2012を元にオーク会にて作成

染色体異常が流産胎児だけでなく、一般の受精卵にもかなり高い頻度で認められます。
染色体に異常を持つ受精卵は、ほとんどが着床しないか化学妊娠で終わります。
特に、常染色体に異常を持つ受精卵は、約90%が着床しないか、化学流産におわります。

流産に見られる染色体異常

染色体の数の異常

・トリソミー

染色体が1本過剰になったものをトリソミーといいます。流産では、常染色体(1~22番)のトリソミーが高い割合で見られます。
3番染色体が過剰なら3トリソミー、18番染色体が過剰なら18トリソミーと言います。
常染色体のトリソミーは、流産の染色体異常の約半数を占めます。
同じトリソミーでも、性染色体は流産になりません。

トリソミー

11トリソミーのaCGH(a)とFISH法(b)による検査結果

(a)
11トリソミーのaCGH

(b)
FISH法

・モノソミー

通常2本1対の染色体のうち1本を失った状態のものをモノソミーといいます。
性染色体は通常女性はXX、男性はXYです。
流産では、X染色体を失ったXモノソミーがよく見られます。
しかし、常染色体のモノソミーは21モノソミーと22モノソミーがわずかに見られるだけです。

・倍数体(三倍体、四倍体)

流産では、三倍体、四倍体の異常が染色体異常に見られます。
卵子と精子が持つ染色体は23本(一倍体=常染色体22本+性染色体1本)です。
精子と卵子が受精すると、受精卵は23+23、合計46本(二倍体)となります。
しかし、1個の卵子に精子が2つ受精すると、受精卵は23+23+23 合計69本(三倍体)となり、精子が4つ受精すると23+23+23+23 合計92本(四倍体)となります。
これは、倍数体と呼ばれる異常ですが、多くは流産となり出生するケースはほとんどありません。

染色体の構造異常

染色体の構造異常には、1)相互転座 2)ロバートソン転座 3)逆位 4)欠失 5)挿入 6)重複 7)環状染色体 8)二動原染色体などがあります。
このうち、1)~3)は、均衡型構造異常といい、形の異常はあるものの遺伝子の情報量に過不足がないので、流産にはなりません。

・不均衡型構造異常

1)~3)以外の構造異常は、遺伝子の情報量に増減があるため、流産や障害を持ったお子様が誕生する可能性があります。
不均衡型構造異常は、突然変異的に起こる場合と、両親のどちらかが、均衡型構造異常を有している場合があります。

着床前診断の一般的な情報を提供しています。