ホルモン検査、診察で異常を認めない場合の当院での治療

男性不妊症で原因不明なものはおよそ9割を占めます。
医学的根拠は高くありませんが、少しでも精子の状態を改善するために、補助的に内服薬が使用されますが、根本的治療や対症療法と併用することが勧められています。
薬物療法には、漢方、ビタミン剤、ホルモン剤などが使用されています。

薬物による治療

精子の異常である乏精子症や精子無力症については、現段階で、はっきりとした治療効果が確認されているものはありません。

しかし、中等度(基準値の半分程度)の異常に対しては内服により、精液所見が改善される方がいます。
当院では基本的に漢方を処方し、それ以外の栄養補助食品については薬局で購入してもらっています。

乏精子症の場合: 八味地黄丸、ビタミンB12(1500~3000μg/日)など
精子無力症の場合: 補中益気湯、カリクレイン(60~600単位/日)など

そのほか、精子にダメージを与える活性酸素を抑える目的で、ビタミンE、ビタミンC、コエンザイムQ10、グルタチオンが使われます。

DNA合成に使われるビタミンB12、葉酸(フォリアミン)も精子濃度の改善が期待できるとしています。
他の漢方薬は、牛車腎気丸、柴胡加竜骨牡蛎湯などがあります。

精索静脈瘤を認める場合

精索静脈瘤とは

陰嚢を触ると、精巣より上側方向につながるコリコリした管があることがわかります。これが「精索」です。
精索は、精子の通り道である精管・血管(動脈・静脈)・神経・リンパ管が束になって構成されています。

精巣から心臓へ血液を戻す血管のことを「精索静脈」と呼びます。
精巣は心臓よりも低い位置にあるため、精索静脈には逆流を防止する弁があり、逆流が起きないようになっています。
この弁が何かしらの原因で機能しなくなり、血液が逆流し、うっ滞するため静脈瘤となります。

精索静脈瘤

精索静脈瘤ができると、

精巣付近で温かい血液がとどまる。

精子はもともと熱に弱く、体温より2~3℃低い32~34℃くらいに保つのが良いとされています。

三角形

造精機能の低下や精子の質の低下。

精巣の高温状態が長く続いてしまうと精子の質が悪化し、乏精子症・精子無力症・精子DNAのダメージの悪化となります。

三角形

不妊症の原因となる。

一般男性の約10~20%に認められ、男性不妊症の原因の約40%を占めると言われています。

精索静脈瘤の症状

精索静脈瘤の症状は一般的に無症状なことが多く、まれに痛みや不快感が生じることがあります。
約80%が左の睾丸(精巣)に認められ、睾丸の頭側に弾力のある索状物を触れます。
症状がきつくなれば、血管の怒張を視診で確認できます。

精索静脈瘤の治療

痛み、不快感などの症状がなく、精液所見が基準値であれば手術の必要はありません。
しかし、パートナーの年齢にもよりますが、不妊治療を急ぐ必要がなければ、手術を検討してもよいかもしれません。
手術方法は、精索静脈を結紮(縛って結ぶこと)もしくは、切断することにより逆流を防止します。

約50%~70%の方で術後3ヶ月から半年で精液所見の改善が期待できます。
ただし、精液所見が改善しない方についても、術後DNA損傷を受けた精子の数が少なくなることが近年の研究で明らかになっています。